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読み物

解約合意書について

2019.03.13

読み物

賃貸借契約を終了させる際に「解約合意書」を締結する場合があります。
ところで、賃貸借契約を終了させる場合には、必ず「解約合意書」を締結しなければならないのでしょうか。また、解約合意書を締結する場合には、どのような事項を定める必要があるのでしょうか。
ここでは、そのような解約合意書を巡って皆さんがお持ちになる疑問点について考えてみたいと思います。

1 解約合意書とは

(1)賃貸借契約が終了する形態
賃貸借契約が終了するパターンは、①契約期間満了による終了と、②契約期間の途中での終了、との2つに分けられます。
更に、期間満了による終了は(a)定期建物賃貸借のように元々更新されない場合、(b)賃借人が更新を希望しない場合、(c)賃貸人が更新を拒絶する場合、の3つがあります。
また、②の期間途中での終了も、(a)一方当事者に債務不履行があったことによる法定解除の場合、(b)契約に定められた中途解約特約による場合、(c)当事者間で解約を合意する場合、の3つがあります。

(2)解約合意書が必要な場合
上記の内、①の期間満了による終了の場合は、当事者の「合意」によって契約が終了する場合ではないため、本来は「解約合意」をする必要はありません。
一方、②の契約期間の途中で契約が終了する場合については、(c)の当事者間で契約を終了させることを合意する場合には、解約するという合意、すなわち、「契約」行為となるため、その合意を当事者間で確認するために「解約合意書」を作成する必要があるといえます。
一方、②の契約期間途中で契約を終了させる場合でも、(a)の法定解除の場合や、(b)の中途解約特約の場合は、当事者の一方の意思表示によって解約でき、相手方と「合意」する必要が無いため、解約合意書は必ずしも必要ないはずです。

(3)解約合意を締結するメリット
このように見てみると、法律的に解約合意書が必要なのは「合意解約」の場合だけとなります。
しかし、賃貸借契約の場合、その終了のパターンを問わず、契約終了後にも原状回復や明け渡しとか、未経過期間分の賃料の精算や未払賃料の請求、水道光熱費等の精算、敷金や保証金の精算といった解決すべき問題が残る場合が多いといえます。そのため、それらの手続きをどう行うのかについて、当事者間で合意しておく必要があります。
その意味では、賃貸借契約が終了する全ての場合について、タイトルを「解約合意書」とするかどうかは別として、解約合意書またはそれに類する書面を取り交わしておくことが有効または好ましいといえます。

2 解約合意書の書き方

解約合意書は、賃貸借契約を終了させることを合意または確認する物ですので、対象となる賃貸借契約を特定した上で、それをいつを持って終了させるかを明記する必要があります。
その上で、契約当事者がそれについて合意または確認したことを称するために、署名(記名)・押印します。
この解約合意書は通常は同じ物を2通(連帯保証人がいる場合には、連帯保証人の分も含めて3通)作成して、各当事者が所持することになります。
では、具体的な書き方について見ていきます。

(1)対象契約の特定
解約合意書では、終了させる賃貸借契約を特定する必要があります。特定の方法は、通常は契約締結日、契約名、対象物件を明記する方法で行います。
具体的には、頭書き部分で、以下のように示すことになります
賃貸人及び賃借人は、下記物件(以下「対象物件」という。)について締結した2019年●月●日付建物賃貸借契約(以下「本件契約」という。)について、以下の通り解約することに合意し、本契約を締結する。
対象物件の表示:

(2)対象物件の特定
解約する契約を特定するためには、物件を明記する必要があります。同じ当事者間で同日に複数の賃貸借契約を締結することはあり得ます。その場合、対象物件を明記しなければ、具体的にどの契約を解約するのかが分からなくなってしまうからです。
対象物件の表示については、通常は登記事項を表示する方法で行います。
所  在:新宿区●●町1丁目1番1号
家屋番号:1番1号
種  類:居宅
構  造:木造鋼板葺平屋建て
床面積 :****平方メートル
(3)解約日
解約合意書では、契約を終了させる日を明確に定める必要があります。
第○条(解約)
賃貸人及び賃借人は、2019年2月28日(以下「解約日」という。)をもって、本件契約を合意解約する。

なお、期間満了による終了の場合に取り交わす書面では、
賃貸人及び賃借人は2019年2月28日を持って、本件契約が期間満了により終了することを確認する。
といった表現になるでしょう。

(4)双方当事者の署名・捺印
合意書である以上、その締結の意思を確認するために、当事者双方が署名(記名)・捺印することになります。。
以上が、解約合意書において最低限記載しなければならない事項です。

3 解約合意書に何を盛り込むべきか

上記の事項が記載されていれば、賃貸借契約を終了させる合意として最低限の要件は満たしているといえます。
しかし、先に述べたとおり、賃貸借契約の終了に際して解約合意書を締結するのは、賃貸借契約終了後の権利関係について明確にするためです。そのためには、更に、それらの権利義務をどのように処理するのかを定め、更に、万一その不履行があった場合のペナルティ等についても定めておく必要があります。
なお、通常、賃貸借契約の中にも契約終了時の精算や原状回復に関する規定が置かれていることが多いと思われます。ただ、実際に契約が終了する時は、契約締結から相当の期間が経過しているのが一般的であり、当事者がその規定を認識しているか疑問です。場合によっては、契約書にはそのように書いているが自分は説明を受けていないから、そのような規定は無効である、といった主張がなされるなどして、トラブルに発展するケースもないとはいえません。更に、時間の経過などにより、契約書に定めた通りに処理することが適切ではなくなっていて、それとは異なる処理を行うことが合理的という場合もあり得ます。
その意味で、賃貸借契約書に契約終了時の取り扱いについて規定が設けられている場合であっても、改めて解約合意書で具体的な処理について合意することは意味があります。
では、具体的にどのような事項を定めるべきか見ていきます。

(1)明け渡し期日
解約日とは別に、明け渡し期限を定めます。
通常は、解約日までに物件を明け渡すのが一般的と思いますが、場合によっては解約日後に原状回復等を行い、その後に明け渡すという場合もあります。
また、明け渡しが解約日よりも後になる場合には、その期間の使用料をどうするかについても定める必要があります。

(2)原状回復義務の内容
通常、賃貸借契約の終了時には、賃借人は物件を原状回復した上で明け渡します。そこで、解約合意書においても、賃借人は原状回復を行う旨、および、その原状回復の内容として具体的に何を行うのかを定めるのが一般的です。単に「原状回復を行う」と定めただけでは、具体的にどこまで行えばいいのか不明確であり、後日、原状回復の内容についてトラブルとなる可能性があります。
また、当初の賃貸借契約の中で原状回復義務について定められている場合であっても、その内容が不明確だったり、また、具体的な事情の変化によりそれとは異なる処理を行うことが望ましい場合もあるため(例えば、原状回復の免除、造作等の残置など)、解約合意書で改めて何をどこまで行うのかについて確認・合意して、解約合意書に定めておくべきです。

(3)支払済み賃料の精算、未払賃料の支払い
賃料前払いの場合には、中途解約によって解約日以降の賃料が既に支払われているという場合が生じる可能性があります。そのような場合には、その解約日以降の期間分の賃料の返還について定める必要があります。
一方、賃借人に未払い賃料等がある場合には、その未払い分の支払いや精算方法(敷金等との総裁など)についても合意しておく必要があります。

(4)敷金・保証金の返還
賃貸借契約においては、賃借人から賃貸人に敷金や保証金が預託されているのが一般的です。従って、賃貸借契約の終了に際しては、その返還・精算が必要となります。
そこで、解約合意書において、預託している敷金・保証金の額がいくらか、それについて償却等をするのか、未払い賃料などとの相殺をするのか、残金がある場合伊はいつ返還するのか、について合意しておく必要があります。

(5)造作物買取請求権等の処理
借地借家法第33条は、「賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合には、建物の賃借人は、賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときに、建物の賃貸人に対して、その造作を買い取るべきことを請求することができる」と定めています。
従って、この規定により賃貸人が造作等を買い取る場合には、その造作の具体的な内容、および金額について合意しておく必要があります。また、当事者間で買取請求を認めない旨を合意している場合にはその旨(買取を行わない旨)を定めておくべきです。

(6)立退料等の支払いがある場合にはその旨
賃貸借契約の終了に際して、賃貸人から賃借人に対して立退料などの支払いがなされる場合があります。特に、賃貸人からの中途解約においては正当事由が必要とされ、その正当事由の評価において立退料の支払いが考慮されるため(借地借家法第28条)、立ち退き料の支払いを合意する場合が増えているといえるでしょう。
そこで、その支払いを行う場合には、その旨、および、金額、支払期日、支払方法等を解約合意書の中で定めておくことが考えられます。

(7)不履行の場合の取り扱い
解約合意書で、明け渡しや原状回付について合意し、また、賃貸人からの敷金・保証金の返還、立退料の支払いについて合意したとしても、それが実際に履行されない場合も考えられます。そこで、解約合意書には、万一、解約合意書で定めた義務が履行されない場合の取り扱い、ペナルティについても定めておくべきです。
一般的には、賃借人の明け渡し義務の不履行の場合については、通常の賃料等の2倍相当額を支払うという定めをすることが多いでしょう。
また、賃貸人側の敷金等の不履行などに備える規定としては、遅延利息の利率を定めておくことがなされます。
また、万一、訴訟等を行う必要が生じる場合に備えて、合意管轄裁判所を定めておくということもなされます。

(8)債権債務の不存在
最後に、解約合意書においては、
本解約合意書に定めるほかは、当事者間に何らの債権債務もないことを確認する
旨の規定を設けることが一般的です。
折角、解約合意書を締結してそれぞれの権利・義務について合意したとしても、後からそれ以外の権利の主張が自由にできるというのでは、解約合意書で双方の権利・義務を確定させた意味が無くなってしまいます。

4 解約合意のあとに退去がない場合は

(1)解約合意書による責任追及
実際に解約合意書を締結し、明け渡し期日を定めたにもかかわらず、賃借人が明け渡しをしない場合にはどうしたらいいでしょうか。
まず、解約合意書の中で、その場合のペナルティについて定めている場合には、そのペナルティの履行を求めることになります。
通常は、明け渡し遅延の場合には、従来の賃料相当額の2倍相当額を支払う義務を負うとするのが相場です。従って、そのような規定が賃貸借契約または解約合意書で定められている場合には、それに基づいた請求を行います。
また、それによって、例えば次の賃借人への賃貸ができない等の実際の損害が生じ場合には、それについて、不法行為による損害賠償等を請求することも考えられるでしょう。

(2)裁判による手続き
解約合意書に定めているペナルティを請求しても、なお、相手方が解約合意書に従った履行をしない場合には、最終的に法的手続きも視野に入れる必要があります。
具体的には
①内容証明郵便等によって、改めて履行を求めることになります。
これによって、具体的に明渡し等を求める意思を明確にします。
②明け渡し調停の申し立て
いきなり訴訟を提起するのではなく、調停の申立を行い話し合いによる解決を目指すことも考えらられます。
③明け渡し請求訴訟
最終的には裁判で明け渡しを求めて訴訟を提起する方法も検討することになります。その場合でも、解約合意書で双方が任意に解約及び明渡しについて合意しているということは、非常に重要な資料・証拠となります。

まとめ

このように、賃貸借契約の終了に際しては、その原因・形式がどのようなものであるかを問わず、解約合意書(または確認書)を締結しておくことが好ましいといえます。
そして、適切な内容の解約合意書をきちんと締結しておくことが、明け渡し等をはじめとする賃貸借契約の終了に際してのトラブルを未然の防ぐための有効な手段となります。