まちづくりコーポレーション

PAGE TOP
Warning: Invalid argument supplied for foreach() in /home/machi-corp/www/machi-corp.jp/wp-content/themes/machi-corp/single-column.php on line 8

読み物

解約権留保特約とは

2019.03.08

読み物

「解約権留保特約」とは、賃貸借契約書において、当事者の一方当事者が賃貸借契約を一方的に中途解約する権利を有する旨を、あらかじめ契約条項として定めておくことをいいます。
通常の建物賃貸借契約書においては、かかる解約権留保特約条項が設けられているのが一般的といえるでしょう。ただ、実はこの解約権留保特約については、一般にはほとんど認識されていませんが、それが有効か否か、また、仮に特約自体は有効であるとしても実際にその行使が認められるか否かについて、法律上の問題があります。
そこで、本稿では、建物賃貸借契約に関して、解約権留保特約の有効性、実際にかかる特約に基づく解約権の行使における問題点・注意点について整理したいと思います。

1貸主から借主に解約を申し付けるときはいつまでに言えばいい?

(1)法律の規定…民法と借地借家法
民法第617条は、期間の定めのない建物の賃貸借契約について、解約申入れをしてから3ヶ月の経過によって賃貸借契約は終了すると定めています。
また、民法第618条は、期間の定めのある賃貸借契約についても、「期間内に解約をする権利を留保したときは」同様であるとして、解約申入れから3ヶ月で契約が終了するとしています。
このように民法の規定だけを見ると、賃貸借契約は、期間の定めがある場合、期間の定めがない場合のいずれにおいても、3ヶ月前に解約の申入れをすれれば、中途解約することができるように思われます。

しかし、建物の賃貸借については、民法とは別に借地借家法という特別法が定められています。特別法というのは民法に優先して適用されることになります。
そして、この借地借家法という法律は、賃借人の保護を第一の目的として制定された法律であり、この法律の定めに抵触する定めで賃借人に不利益なものは無効と定めています(借地借家法第30条)。
その結果、上記の民法の規定は、借地借家法によって大きく修正される結果となっています。以下では、借地借家法ではどのように取り扱われるかを具体的に見ていきましょう。

(2)期間の定めのない建物賃貸借契約について

上記の通り、民法では3ヶ月前に予告すれば賃貸借契約を解約できると定めていましたが、借地借家法第27条は賃貸人が解約申入れをした場合について、賃貸借契約は解約申入れから6ヶ月後に終了するとしています。つまり、解約申入れから解約の効力が発生するまでの期間が借地借家法では、民法の2倍に延長されているのです。従って、期間の定めのない建物賃貸借契約を解約するためには、少なくとも解約申入れは解約希望日の6ヶ月前までには行わなければならないということになります。
仮に、契約書において、これよりも短い期間で解約できるという規定を解約権留保特約として設けたとしても、借地借家法第30条によりこの規定は借地借家法の規定よりも賃借人に不利益な規定として無効とされてしまいます。
一方、1年前までに予告するというように、予告期間を6ヶ月より長く定める特約を定めることは賃借人に有利な内容となるため、その特約の効力が認められます。

(3)期間の定めがある賃貸借契約について

大前提として理解しておかなければならないことは、当事者双方が合意して締結した契約を一方当事者の勝手な都合で変更したり終了させたりすることは原則としてできないということです。
つまり、賃貸借契約において契約期間を定めた場合には、基本的に当事者の一方の都合によって契約を中途解約することはできないのが原則ということです。
従って、期間の定めのある賃貸借契約について、契約期間の途中で中途解約をできるようにするためには、あらかじめ賃貸借契約書の中でその旨を定めておく必要があるのです。すなわち、民法第618条による中途解約の規定は、借地借家法が適用される建物賃貸借契約にはそもそも適用がないということになります。
それでは、期間の定めがある賃貸借契約において中途解約留保特約を設けた場合、その予告期間はどのように設定すればいいかが問題となります。
これについて明確に定めた規定はありません。しかし、期間の定めのない契約を解約するための予告期間について6ヶ月と定める借地借家法第27条に準じて、少なくとも6ヶ月前の予告が必要と解されています。その結果、中途解約留保特約を設ける場合でも、即時に解約できるとか、6ヶ月未満の予告期間しか定めなかった場合には、その特約の効力は認められないとされています(東京地方裁判所判決昭和55年2月12日判時965号85頁、東京地方裁判所判決昭和56年7月10日判タ465号139頁)。

2解約権留保特約を結んでいるにもかかわらず解約できないのはなぜ

では、6ヶ月以上の予告期間を定めた中途解約特約を契約書の中に定めておけば、常に解約できるのでしょうか。
結論的からいうと、必ず解約できるというわけではありません。
先に述べたとおり、借地借家法は賃借人の保護を第一の目的としています。そして、現実に賃貸借契約を締結する場合には、賃貸人の立場が強く、賃借人としては賃貸人から提示された契約内容について、修正を求めることが現実的に困難な場合が多々あると考えられます。
その結果、契約条項としては、賃貸人からの中途解約留保条項が設けられている例が多いと思われます。
そして、かかる中途解約留保条項が全て有効であるとされてしまうと、現実的に賃借人の保護は図ることができないこととなってしまいます。
そこで、借地借家法第28条は、建物賃貸借契約の解約や更新拒絶について、「建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経緯、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明け渡しの条件として又は建物の明け渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。」
と定めています。これを一般に「正当事由」といいます。
借地借家法第28条は、元々は期間の定めのない賃貸借の解約について定めた借地借家法第27条を前提とする規定ですが、期間の定めのある賃貸借契約について解約留保特約を設ける場合についても、同様に扱うべきとされています。
その結果、期間の定めのある建物賃貸借契約を解約権留保特約に基づいて中途解約する場合においても、その解約について借地借家法第28条に定める正当事由の有無が考慮され、もし「正当事由」の存在が認められない場合には、仮に賃貸借契約書に6ヶ月以上の期間を予告期間とする解約権留保特約に従った解約申入れが賃貸人からあった場合であっても、中途解約は効力を生じないといとされています。
このように、現実的には、中途解約留保特約を設けている場合であっても、実際に中途解約をすることは難しいというのが実際です。

3解約権留保特約はどんなときに結ぶべきなのか

(1)期間の定めのない賃貸借契約
期間の定めのない賃貸借契約(現実的には、はじめから期間の定めのない賃貸借契約が締結されるということは、あまりないと思いますが)については、借地借家法第27条が適用されるため、解約権留保特約をあえて契約条項として定めなくても、借地借家法第27条を直接の根拠として賃貸借契約を解約することができるということになります。
従いまして、期間の定めのない賃貸借契約を締結する場合には、法律的には、あえて解約権留保特約の条項を設ける必要は必ずしも無いということになります。
もちろん、第27条の予告期間である6ヶ月よりも長い予告期間を定めるなど、法律の規定と異なる内容とする場合には、その旨を定めておく必要があります(ただし、借地借家法の規定よりも賃借人に不利な内容は定めても借地借家法第30条により無効とされます)。
(2)期間の定めのある賃貸借契約
期間の定めのある賃貸借契約の場合には、中途解約留保特約がない限り中途解約をすることができないため、契約期間の途中での中途解約をするためには、6ヶ月以上の予告期間を定めた解約権留保特約を賃貸借契約書の中に定めておく必要があります。
ただ、既に述べたとおり、この特約を設けたからといって必ず中途解約ができる訳ではありません。実際に中途解約が認められるかどうかは、最終的に正当事由が認められるかどうかという具体的な事情によって決定されることになります。ただ、中途解約権留保条項を設けていなければ、中途解約は「不可能」になってしまうわけですから、現実に行使が認められるかどうかは別として、規定としては設けておく必要があるということになります。

まとめ

(1)借地借家法
中途解約留保特約が実際にどの程度実効性があるものかについて見てきましたが、ここで見てきたように、建物賃貸借契約については、民法だけで無く、借地借家法という特別法の内容を正確に理解する必要があります。
実際、現実に締結されている賃貸借契約書を見て見えると、当事者の双方とも「1ヶ月前予告によって中途解約できる」という規定が設けられた賃貸借契約書などを見かけることがあります。ただ、このような規定が無効であることは、上記の通りです。

(2)賃借人からの解約
ここまで、賃貸人からの中途解約について見てきましたが、最後に、賃借人からの解約についての解約権留保特約についても確認しておきましょう。
借地借家法は賃借人の保護、すなわち、賃借人が賃借権を維持できるようにすることを目的として定められた規定です。従って、賃借人の側から契約関係から離脱する場合については特段の規定を設けていません。その結果、賃借人からの解約については、一般法である民法第617条及び第618条の規定がそのまま適用されることとなり、中途解約の申入れから3ヶ月で効力を生じることになります。

一方で、賃借人からの解約について3ヶ月以上の予告期間を定める規定が有効かということが問題となります。賃借人からの解約期間を伸ばす合意は、賃借人にとっては不利になるから借地借家法第30条により無効という考え方もあり得ますが、基本的には賃借人からの解約申入れについて借地借家法はなにも定めていない以上、借地借家法の定めよりも不利になるという関係は認められないため、借地借家法第30条は適用されず、かかる特約も有効と考えられます。